森近労働法務事務所
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健康管理業務の重要性
   
従業員の健康管理と労働災害・民事損害賠償リスクの軽減  
 

会社が使用者責任上、注意しなければならないのは、仕事が特に過重である場合に、血管病変等が自然的経過を超えて著しく増悪して、その結果、脳・心臓疾患を発症することがあるという事です。

このような場合には、仕事がその発症に当たって、相対的に有力な原因となったものとして、労災認定されることがあります。
また、使用者に健康配慮義務違反があれば民事損害賠償の対象にもなります。

平成13年12月より過重労働に関する労災の認定基準が改正されて、長期間にわたる疲労の蓄積についても業務により明らかな過重負荷として考慮することとされました。これにより脳・心臓疾患について、労働災害として認められやすくなっただけではなく、これに伴って従業員やその家族の権利意識も高まっていると考えられます。したがって企業に課された健康配慮義務の範囲は、広範かつ高度化されつつあります。

すなわち、会社に健康管理上の手落ちがあると、脳・心臓疾患が原因で従業員が倒れた場合、その有力な原因が本人の素因や生活習慣によるものであったとしても、会社に対して損害賠償を請求してくる事も予想されます。

会社が損害賠償責任を回避するためには、労働安全衛生法に規定されている義務を最低限履行しなければならない事はもとより、普段の業務遂行上から知り得た従業員の健康に関する情報に基づき相応な増悪予防の配慮をしなければなりません。

しかし、健康管理業務を完璧にこなすには膨大な労力とコストがかかります。
このことから従業員の健康管理を進めていくには、会社の実情に合わせて、出来る事からポイントをついて、段階的にかつバランスを取りながら実施していくことが必要ではないかと考えます。
まずは最低限、健康診断は漏れなく実施して、その結果を社員に通知し、健康上注意しなければならない従業員については、管理区分に応じて目標の労働時間に近づけていく事や、繁忙期などにどうしても長時間労働にならざる終えない場合には、優先して、繁忙期明けに長期休業を与えるなどの体制整備をするだけでも、相当程度、健康状態の悪化を軽減させる事は出来ると思います。

ある程度体制が整ってきたらこれまでの損害賠償の軽減措置・事故の予防からステップアップして、将来的には従業員の生産性の向上・福利厚生につなげていく事を目標として取り組んでいくことが大切ではないかと考えます。

※ このサイトの情報は一般的な内容で私見も含まれています。全ての事案に当てはまるものではありません。

 
 

  
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健康配慮義務違反の民事損害賠償について  
 

過重労働によって過労死や後遺障害を負った場合、遺族や本人は勤めていた会社に対して損害賠償請求をする事が出来ます。
損害賠償の内容としては、療養期間中の治療費や差額ベット、休業補償の他、本人が死亡・障害を負うことなく、本来健康に仕事をしていれば収得できたはずの逸失利益、これに、慰謝料を加えたものが会社が負担しなければならない損害賠償請求額ということになります。

この時、労働者災害補償保険を受給できる場合であっても、補償範囲は損害額すべてを補うものではありません。
以下、労働者災害補償保険で補えない損害賠償を思い当たる所挙げてみます。

1. 保険対象外の治療費や差額ベット代等
2. 本人の通院や家族の面会の場合の交通費等
3. 休業補償の差額4割相当額・賞与相当額・退職金逸失利益
4. 遺族補償年金・障害補償年金の保険利益と逸失利益の差額
5. 慰謝料

逸失利益と慰謝料の算定は、被災者側が請求・立証してきますが、この時、請求金額・根拠は事案に応じて異なります。

以下、労災保険が受給できる場合でも、会社が負担しなければならない逸失利益と慰謝料の一般的な損害賠償額の例を算定してみます。

  逸失利益と慰謝料を算定して、そこから労働者災害補償保険の保険利益を控除します。
前提条件
心疾患より労災の障害認定9級に該当(労働喪失率35%)
晦 ○○店  45歳 被災日までの勤続年数 1年
被災日前3ヶ月の平均賃金 30万円 年収400万円
後遺障害滅失利益=基礎収入×労働喪失割合×新ホフマン係数(14.580)
労災障害補償一時金の会社保険利益=給付基礎日額の391日分

健康配慮義務を怠っていた場合の損害賠償負担額
会社に過失割合100%認められた場合
逸失利益民事賠償額 後遺障害逸失利益−労災保険利益=1,650万円
慰謝料賠償額 慰謝料(弁護士会基準による)=300万円

会社負担損害賠償額計=1,950万円

※ あくまで机上での例です。実際の紛争時には参考になりません。

ここで理解しなければならないのは、ふだん健康配慮義務を尽くしていれば、上記のような事故は回避する事が出来る可能性があります。また、1度事故が起こってしまった場合でも、会社がこれまでどの程度、健康配慮義務を尽くしたかどうかで、過失相殺の観点から損害賠償の金額に差が発生すると言うことです。

※ このサイトの情報は一般的な内容で私見も含まれています。全ての事案に当てはまるものではありません。

 
 

 

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過重労働による労災の新認定基準  
 

■基本的な考え方
過重労働による労災認定の対象疾病は、脳血管疾患(脳内出血・くも膜下出血・脳梗塞・高血圧脳症)心疾患(心筋梗塞・狭心症・心停止・解離性大動脈瘤)などが上げられます。(脳・心臓疾患)
脳・心臓疾患は、その発症の基礎となる動脈硬化、動脈瘤などの血管病変等が主に加齢、食生活、生活環境等の日常生活による諸要因や遺伝等による要因によって形成され、それが徐々に進行及び増悪して、あるとき突然に発症するものです。
しかしながら、業務による明らかな過重負荷が加わることによって、血管病変等がその自然的経過を超えて著しく象悪し、脳・心臓疾患が発症する場合があります。
現在、日本人の死因の3割は上記疾患が原因だといわれています。

■労災認定新基準について
厚労省は平成13年新たな通達(「脳血管疾患及び虚血性疾患等の認定基準について」平成13.12.12基発第1063号)を示しました。以下主な改正点を紹介します。

■ 長時間の過重業務について
@疲労の蓄積の考え方
恒常的な長時間労働の負荷が長期間にわたって作用した場合には、「疲労の蓄積」が生じ、これが血管病変等をその自然的経過を超えて著しく増悪させ、その結果、脳・心臓疾患を発症させることがあります。
このことから、発症との関連性において、業務の過重性を評価するにあったっては、発症時における疲労の蓄積がどの程度であったかという観点から判断することになります。
A評価期間
発症前おおむね6ヶ月間
B過重性評価における労働時間の目安
@ 発症前1ヶ月間ないし6ヶ月間にわたって、1ヶ月当たりおおむね45時間(総労働時間概略215時間)を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いが、おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できる。
A 発症前1ヶ月におおむね100時間(総労働時間概略270時間)又は発症前2ヶ月間ないし6ヶ月間にわたって、1ヶ月当たりおおむね80時間(総労働時間概略250時間)を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できることを踏まえて判断する。
C加重性評価の具体的負荷要因
@労働時間 A不規則な勤務 B 拘束時間の長い勤務

労働者の申請に基づき労働基準監督署がこれらの要因を総合考慮の上、労災認定の可否を判断します。

 
 

 

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健康管理と労働安全衛生法  
 

1. 使用者の健康診断実施義務(安衛法66条、安衛則43・44条・健康障害の把握義務・刑罰基準)
使用者は常時使用する全ての従業員に対して、雇入時と毎年1回定期に医師による健診を実施しなければならない。
常時深夜業に従事する労働者には、年2回の定期健診が必要である。(安衛則45条1項)
2. 健診結果について医師等から意見聴取義務(健康障害の把握義務・啓発基準)
法定の健康診断の結果(異常の所見があると診断された労働者に係るもの)に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師または歯科医師の意見を聞かなければならない。
3. 軽減業務への配転・残業時間の削減等の措置(安衛法66条4、66条5・増悪予防措置義務・啓発基準)
医師等の意見を勘案いて(安衛法66条4)「当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設または設備の設置または整備その他の適切な措置を講じなければならない」
4. 一般健康診断結果の通知義務(安衛法66条の6、安衛則51条の4、5・刑罰基準)
事業者は、法定健康診断を受けた労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより(安衛則51条の4)、遅滞なく当該健康診断の結果を通知しなければならない。
5. 保健指導等の義務(安衛法66条の7・啓発基準)
事業者は、法定の健康診断もしくは当該健康診断等の結果、特に健康の保持に努める必要があると認められる労働者に対し、医師または保健師による保健指導を行うように努めなければならない。
6. 長時間労働者への医師による面接指導の実施(安衛法66条の8・増悪予防措置義務・啓発基準)
事業者は労働者の週40時間を超える労働が1ヶ月あたり100時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められるときは、労働者の申し入れを受けて、医師による面接指導を行わなければならない。
事業者は、次の@またはAに該当する労働者にも、面接指導を実施する、又は面接指導に準ずる措置を講じるように努めなければならない。
@長時間の労働(週40時間を超える労働が1ヶ月あたり80時間を超えた場合)により、疲労の蓄積が認められ、又は健康上の不安を有している労働者(申出を受けて実施)
A事業場で定める基準に該当する労働者
7. 健康教育等(安衛法69条以下健康増進義務・啓発基準)
事業者は労働者に対する健康教育及び健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置を継続的かつ計画的に講ずるように努めなければならない。
8. 労働時間把握義務
労働時間に関わる規程が適用される労働者はもちろんのこと、管理監督者及びみなし労働時間制が適用される労働者についても健康確保を図る必要があることから、使用者において適正な労働時間管理を行う責務がある。

 

 

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健康管理と従業員の福利厚生・労働生産性の向上  
 

社会全体として従来から「生活習慣病」という観点から疾病を横断的に整理して、「生活習慣病」を予防する為の環境整備等の取組の必要性が指摘されていました。
そこで、国は「健康日本21」を中心とする国民の健康づくり・疾病予防を積極的に推進するため健康増進法を制定して、平成17年度から10年間重点的に施策を展開する事になっています。
また、労働安全衛生法においても、有所見者に限らず全ての人を対象として、若いころから継続的で計画的に心と体の両面からトータルな健康づくりを進める運動(THP−トータルヘルスプロモーション)をスタートさせました。

実際に高年齢者・肥満者の多くが、糖尿病、高血圧症、高脂血症などの複数の危険因子を併せ持っていること、危険因子が重なるほど脳血管疾患・心疾患を発症する危険が増大すること、運動習慣の徹底と食生活の改善を中心とした生活習慣の改善により内臓脂肪を減少させることで高血糖、高血圧、高脂血症といった危険因子のすべてが改善するといった科学的根拠を踏まえれば、生活習慣病対策を推進していく意義があると言えます。

さらに、職場のストレスによる職場不適応の発生やストレス関連疾病の発症の例も見られ、社員の心の健康の問題が重要な課題になって言います。

最近マスコミなどでも健康増進・生活習慣病の改善等の番組編成が増えて、従業員の健康志向も向上し、会社の福利厚生として健康増進施策のニーズは高まっていると考えられます。

そこで今後、会社としても、健康に異常のある社員が自主的に行う健康づくりの支援にとどまらず、生活習慣病の「予備軍」でありながら自覚していない社員に対し「予防」に対する理解の促進や、健康に異常のない社員に対しても、生涯にわたる個人の健康や職業生活の質の向上に資する為の環境整備が求められています。

健康管理を適切に実行する事によって、会社の従業員の健康状態が向上すれば、必ず労働生産性も向上するはずです。
定着率・欠勤率の改善、作業能率の向上、職場の活性化、慢性疲労の軽減など長期的な視点で見れば他にも色々考えられます。
従業員は大切な会社の資産です。例えは適切でないかもしれませんが、工作機械などは、きちんとした整備がされていないと故障などで生産効率落ちて耐用年数も短くなり、より大きなコストが掛かってきます。これは社員にも同じ事が言えるのではないでしょうか?

つまり、福利厚生施策として健康増進を実施する事によって、結果的に会社の生産性を直接向上させる事が出来ると考えますがいかがでしょうか?

※ このサイトの情報は一般的な内容で私見も含まれています。全ての事案に当てはまるものではありません。

 

 
 

  

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健康管理と労働時間法制  
 

現在、ホワイトカラーの労働時間法制の改正が政策課題として上げられています。
これは、経済社会の変化に伴い、成果等が必ずしも労働時間の長短に比例しない性格の業務を行う労働者が増加するなどで、企業側の要請を受けて、労働時間規制の適用除外の範囲を広げようと言うものです。

これまでも、労働時間規制の適用除外としては、管理監督者や企画裁量労働時間制・専門業務型裁量労働時間制がありました。企画業務裁量労働時間制においても、すでに平成15年の改正労働基準法によって規制が緩和されてきています。

しかし、会社が裁量労働時間制を導入するためには、過重労働の健康障害を防止するため健康確保の措置を労使協定にて締結し労働基準監督署に届出て、その内容を実施しなければなりません。
また、労働時間規制が適用除外になったとしても、使用者の民事上の健康配慮上の義務までもが免除されるものではありません。

今後、労働時間規制が緩和される中、使用者が管理監督者や裁量労働時間制を導入するためには、社員の健康管理体制が益々重要なポイントになってきています。

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